平成29年11月17日(金)、会場 栗東ウイングプラザにて、滋賀県土地家屋調査士会主催の第一回業務研修会が開催されました。
今回の研修会、二本立てなのですが、テーマ 第1部が「法定相続情報証明制度について」、講師は大津地方法務局 統括登記官 嶋田 賢司 様でした。
平成29年5月29日より運用開始された「法定相続情報証明制度」ですが、その導入の背景としましては「相続登記未了」の土地が増え、結果として所有者不明となる土地の増加です。現在でも所有者不明地とされる総面積は九州に相当する程度と言われていますね。
しかし、この傾向は今後、ネズミ算的に一層拡大するであろうとされており、私たち土地家屋調査士にとって日常業務の上で頭の痛い問題であるばかりか、日本の登記制度への信頼に直結する、制度の根幹にかかわる重要問題であると思います。
そこで、この法定相続情報証明制度の導入を通して、相続手続に直面している相続人に、相続登記のメリットや放置することのデメリットを登記官が説明することを通じ、相続登記の必要性について意識を向上させるという目論みもあるようです。
今回は、研修会ですので法定相続情報証明制度の概要について説明がありました。しょうもないことですが、証明自体は何枚でも、無料で発行していただけるのですね。
また、この手続きの代理人となれるものは、法定代理人のほか、①民法上の親族、②資格代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士に限る。)と、いうことで土地家屋調査士も代理ができるということになっています。なるほど、だから土地家屋調査士会として研修をやっている訳ですね。
なお、実際の利用状況としては「相続登記」に利用されているケース以上に「銀行などでの預貯金の払い戻しのため」が多いそうです。登記はしなくても、キャッシュは欲しい、という実際の世情を反映しているのでしょうか。
実は来月も滋賀県行政書士会の支部研修で法定相続情報証明制度の研修会があります。先ほどあげましたように、行政書士もこの制度では資格代理人になれます。またそちらでも、今度は行政書士として参加させていただいて、しっかり学んでおきたいと思いました。
続いて第2部では「添付図面電子化のススメ 〜来るべき完全オンライン申請時代を見据えて〜」というテーマで、講師は大阪土地家屋調査士会の正井 利明様でした。
来年4月から導入される完全オンラインによる登記申請システム開始に向けて、オンライン申請のメリットや注意点などの解説をしていただきました。
研修ではまず、紙中心文化からの脱却しようということ、また完全オンラインには「資格者代理人方式(仮)」が導入されることから、登記制度を支える資格者としてのプライドが問われるテーマであると力説いただきました。
オンライン申請のメリットとしては、やはり「きれいな図面」とのことです。紙申請や半ラインとちがって、登記官がいちいちスキャンする必要がないから、当然、きれいな図面が法務局に備え付け出来ますね。V30システムの導入によって処理が劇的に早くなるということで、紙申請では処理が今後は随分後回しにされてしまうのかもしれませんね。
また、完全オンラインでは必須の添付情報の徹底的な電子化ですが「登記識別情報以外は全部電子化したらいい」とのお話でした。オンライン申請が始まった当時と比べれば導入コストも、手間も随分ととっつき易くなりました。そもそも、ほとんどの資料はスキャンしてプリンターで出力しているのですが、10年前ならちょっと考えられなかったことです。私も時代に乗り遅れないように、完全オンラインにむけて今から環境を用意しておこうと思った次第です。
また併せて、最近増えつつあるコンビニで取得された証明書の扱いについても解説がありました。市役所窓口で直接発行を受けた証明書とは少し様式に違いはありますが、もちろん証明力に差はありません。ただ偽造技術も大変巧妙になっていることから、コンビニ交付の証明書を受け取る際には専門家としてそれらを見破ることのできる知識や手段を日頃から対応しておくことが重要であると感じました。最近、東京での土地売却に関しての詐欺事件などから「地面師」なる言葉もマスコミで取り上げられるようになりましたが、こうした偽造技術の向上がおそらく一役買っているのでしょうね。
今回の研修会、参加するまでは正直なところ「オンライン、もうやってるから、いいよね」「相続情報証明、司法書士じゃなんだから関係ないかな」といった認識でいたのですが、いい意味で期待を裏切られる結果となりました。特にオンライン申請については、今回の研修内容に忠実に、速やかに事務所で対応していきたいと思います。
講師の嶋田先生・正井先生、そして業務研修会を準備してくださった滋賀県土地家屋調査士会業務部の皆さん、ありがとうございました。