GIS DAY in 関西「国際ワークショップ日本の古地図ポータルサイト」

 昨日は立命館大学衣笠キャンパスにて開催されました「GISDAY in関西2018 国際ワークショップ日本の古地図ポータルサイト」に参加してきました。

 上の写真は会場の平井嘉一郎記念図書館です。久しぶりの母校だったのですが、キャンパス整備が進んでいまして、随分いろんなところが変わっていると実感しましたが、最も変わったのがこの図書館でしょうね。昔は体育館の位置に図書館があり、入学式も、卒業式もそこで行われていましたね。あと、建物が増えて、時計塔のある存心館の周囲がなんだか窮屈になった気がしましたね。

 

 さて、今回の国際ワークショップですが、三日間のスケジュールでして、私は二日目に参加させていただきました。事前申し込みが必要の、セミクローズ形式でのワークショップです。参加者名簿も配られましたが、当然ですが土地家屋調査士は私だけで、大よそ50名程度のほとんどが大学研究者の方のようでした。なお、会場では同時通訳も行われており、なるほどさすが国際ワークショップだと感じました。

 

 二日目の最初に矢野桂司立命館大学教授からの企画全体の趣旨説明が行われました。矢野先生は言わずと知れたGIS研究の代表的な先生で、私自身も在校中には講義を受ける機会はなかったものの、何度もお見かけはしております。

 矢野先生からは絵図・古地図のデジタル化が進み、海外ではold maps online という古地図に関してのポータルサイトがあり、多くの機関が参加され利便性が高いが、日本ではそうしたポータルサイト的なものがなく、バラバラで使い勝手が悪くなっている、という説明でした。

 また、日本では現在どんな課題があるか、ということで、ポータルサイトがなぜない?、ジオリファレンスはどれくらい難しい?、誰が古地図を提供してくれるのか?、誰がボランティアをしてくれるのか?、といった投げかけをして下さいました。

 さらに今後の課題として日本の古地図のポータルサイトの構築、古地図と所有者とのコラボレーション、日本の古地図ポータルサイトによる「デジタル・ヒューマニティーズ(DH)」の推進を挙げられました。

 

上は当日配布された資料です。

なお、下記はこの国際ワークショップの案内文なのですが、なかなかに高尚な文章だと思いましたので、転載させていただきます。特に「デジタル・ヒューマニティーズ(DH)」、未だによく理解できないのですが、「文系・理系の連携・融合・統合」とのくだり、僭越ながら土地家屋調査士とも通底する部分もあるのかなと、勝手に理解させていただきました。

 

 ”近年、人文学で扱う紙ベースの学術資料のデジタル化と、それらのWebによる公開が急速に進んでいます。日本においても、『国立国会図書館デジタルコレクション』がその代表で、国立国会図書館に所蔵されている多くの学術資料がデジタル化され、インターネット上に公開されています。その学術資料の中には、日本の地図・絵図などの古地図も多く含まれています。国立国会図書館をはじめ、国土地理院、東京都立図書館、国際日本文化センター、歴史民俗博物館、各大学図書館など多くの古地図を所蔵する機関が独自にWeb公開を積極的に進めており、また、海外においても、近年、Stanford大学が日本の外邦図をWebGISで公開するなど、日本の古地図が海外で注目を集めています。しかし、それらインターネット上に公開された日本の古地図を総合的・横断的に検索できる効果的なWebGISベースのポータルサイトは存在していません。

 2000年代中葉から、伝統的な人文学においても、ICTを活用して学術資料のアーカイブ構築、文化コンテンツの分析、学術成果の公開や展示の方法などを、文系・理系の連携・融合・統合によって複数の研究者によるプロジェクト型の研究スタイルをもつデジタル・ヒューマニティーズ(DH)が展開している。その中で、地理空間情報を扱う歴史GISは、人文学の空間的ターンとしての地理人文学(GeoHumanities)あるいは空間人文学(Spatial Humanities)などの人文学の新しい学問分野の形成において中心的な役割を果たしている。日本における歴史GIS、ひいては伝統的な人文学を、学際的・国際的な協働による新たなプロジェクト型の研究スタイルに飛躍的に展開させるためにも、その基礎資料となる日本の古地図を総合的に・横断的に検索し、さらにGIS分析を可能とするポータルサイトの構築が急務である。”

 

 

 上記の矢野先生の問題提起を受ける形で、午前中に四名からの報告、午後に六名からご報告をいただきました。主には博物館資料館の学芸員・図書館司書のような方のご報告が多かったのですが、日頃私も無理をお願いしたりするばかりで、こうしてまとまって地図や絵図、古文書を所蔵する資料館の側からのお話や本音をお聞きする機会は初めてでしたので、大変興味深いものでした。

 またこれまではマイクロフィルムで資料を撮影し、保存し、閲覧に供していたパターンが非常に多いのですが、デジタル化の波の中で、予算人員ともに制約ある中で大変ご尽力いただいていることがよく分かりました。私なども、こうしたご努力の恩恵を受けて何とか研究をさせていただいているのだと思います。

 

 午前中の報告者であった京都学・歴彩館、京都市歴史資料館、国際日本文化研究センターには私自身が訪問したことはないのですが又の機会に是非訪問したいと思いました。

 

 午後からは大学図書館の職員さんのご報告や、さらには国土地理院の「古地図コレクション」について最近追加公開された資料もおありとのことで大変興味深く拝聴しました。

また京都府立図書館の福島さまからは京都市明細図を活用した街歩き事業について御報告があったのですが、戦前の京都の町並みを詳細に描いた京都市明細図はリピーターの多い、目の肥えた京都通の観光者にとって確かに興味をもつアイテムだろうとは思いました。歴史が長い京都ですが、何も近代までの京都の歩みにのみ皆さん興味があるわけではなくて、近代に入っての京都の変化や発展というのも掘り起こせば、いろんなことが見えてくるのだろうと思います。

 

 全体の感想として、絵図や地籍図を含む古地図の世界も、今後一層デジタル化の波は押し寄せてくると思います。利用する側にしてみれば、インターネットで高精細な地図を、手軽に拝見させていただき、利用させていただけることにより、これまででは到底できなかった活用方法や研究が今後進むのかな、と思います。

 もちろん私の属する土地家屋調査士の世界にも影響があると思います。何せ、素人の方でも所蔵する機関のサイトを活用すれば、専門家である土地家屋調査士以上に境界に関する資料をつくれる時代が近い将来訪れるのだろう思います。

※ついでに言っておきますが、法務局への注文ですが「和紙公図(旧公図)」はWEB上で公開したらいかがでしょうか?ことさらWEB上で、公開できない理由はないように思いますが…

 

 今回の国際ワークショップでは古地図を利用する側の目線のみならず、所蔵する側、保存する側の論理も併せてお話をお聞きすることができました。その分、古地図に対する自らの視座が広がったような思いがしました。また、久々に英語を丸一日浴びる体験をしましたが、こうしてみると日本語よりも英語の方が論理的といいますか、不思議と表現がしっくりするシーンが多いような気がしました。

 なお、今回は二日目だけ参加させてい頂きましたが、一日目はWEB上で日本の歴史的な地図をバンバン公開(古地図の里帰り)されているスタンフォード大学からのご報告や他にも大変興味深いお話があったにもかかわらず参加できずに残念でした。

 いずれにせよ今回の国際ワークショップ、母校という微妙な緊張もありつつ、日常とは少し離れた貴重な体験で、大変刺激的な一日でした。

開催に関わっていただいた先生方、スタッフの皆様、大変ありがとうございました。

 

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