例年5月のこの時期になりますと、好例の「固定資産税」のシーズンです。正確にいいますと「固定資産税(都市計画税)の納税通知書」と、それに付随する「固定資産税課税明細書」が市役所から送られてくるシーズンということになりますね。不動産を所有している方々にとっては気の重い季節です。
わたしも事務所は三年ほど前に建てた自前のものですし、自宅も所有しておりますので、毎年固定資産税の通知は受け取っております。正直なところ、毎年十数万円程度の支払いをしており、かなり痛い出費ではあります。
多くの市民の皆さんもこの結構な支払いになる固定資産税について「なんとか安くできないものか…」とお考えになるのは当然のことだと思います。何分、不動産取得税などの単発の支出と違い、固定資産を所有している限り徴収されるわけですから、固定資産税の支払額を何十年と足していけばそれこそ結構な額が積みあがってしまいます。なお、固定資産税の通知書には「不服がある際には審査の申し出という手続があるよ」、とわざわざ触れてありますが、常識的にいって、申し立てるにはハードルが高いとは思います。
そこで市民の皆さんが、なんとかその固定資産税を少しでも安く抑えようと考えられ、そのための手続きの依頼を幣事務所にも毎年ぽつぽついただきます。
その具体的な手法としまして代表的なものは、宅地の一部で畑をされているケースで、一筆すべてが宅地として課税されている場合、その筆を分筆し、地目を宅地から畑へと変更する手法です。
農地は宅地と違って土地の評価額がけた違いにぐっと下がりますから、それなりの節税にはなります。都市部はともかく、田舎は屋敷地が広いので、面積的にもそれなりの広さになりますので、計算をすると課税評価額もそれなりに下がりますね。私も、現実的に、その手法が一番手っ取り早くて、確度の高い対策だろうとは思います。
ただ、その手法はメリットだけではないですね。簡単にメリット、デメリットを下記に列記しますと、
・メリット
1、固定資産税の支払いを軽減できる
2、相続財産の評価を押さえることができ、相続税の支払いも軽減できる
3、現状の地目を正確に不動産登記に反映できる
・デメリット
1、手続きの際に土地家屋調査士への報酬が必要になる(場合によっては元が取れないことも)
2、対象地が金融機関の担保に入っている(担保価値の毀損として、約定違反と指摘される可能性も)
3、一度畑などの農地にしてしまうと、また宅地に変更する際には農地転用許可手続きが必要になる
4、分筆の際に縄のびの箇所の面積が正しく反映されて課税対象の面積が増加してしまう
あたりでしょうか。分筆については素人さんが手続きを行うことは実質的に無理です。また土地家屋調査士が代理したところで境界の確定などに手間取ってしまい、想定以上に費用がかかることもあり得ます。
なお、今年に入って大昔から宅地だった土地が、平成に入って農地(畑)になり、今回売却のために再度宅地へと、という手続きも代理させていただきましたが、何処かもやもやする業務でした。
やはり宅地を農地へと変更するのは、偏見も入っているかもしれないですが、少子高齢化社会を地で行くと言いますか、いかにも地域が衰退している感じがしてしまいます。せっかく、ご依頼をいただいておいてこういっては失礼かもしれませんが、宅地を農地へ戻す手続きはあまり気乗りがしないことも事実です。
以上まとめますと、固定資産税を安くするのに王道はないということでしょうか。上にも列記したように、どちらかと言えばメリットよりもデメリットの方が多く思われます。仮に、そんなに簡単に税金を安くする方法があるのなら、私自身が是非教えてほしいくらいです。
なお、固定資産税を節約するために畑を始める、というのも本末転倒ですし、長続きもしないでしょうから、畑も安易にはしない方がよろしいかとは思います。あくまで、畑がしたい、という気持ちが前提にあってほしいですね。
それにしても固定資産税って高い…。いや、税金全般について言えることですが、支払いの際には「なんでこんなに!」とついつい思ってしまいます。せめて、税金については、納税者にとっても納得がいくような、有効な使い方をしていただきたいものですね。