本日は午後から滋賀県草津市内にて滋賀県土地家屋調査士会、業務部・研究部共催の令和元年第1回研修会でした。
テーマは「所有者不明土地の問題とは何か 、その解消に向けての土地家屋調査士の関わり方」ということで、昨今マスコミ等においても「九州より広い土地が所有者不明土地(迷子の土地とも)と化している」との言葉が躍っており、徐々に世間の関心も高まっていますが、そうした社会的な課題に対して土地家屋調査士として今後どのように関われるのかを探るきっかけとなる研修会でした。
まず第1部において「所有者不明土地問題の背後にある問題ーその日本的起源と解決の方法」というテーマで立命館大学政策科学部の高村学人教授に講演をいただきました。高村教授は所有者不明土地や空き家問題などについても積極的に論文を発表されておられる気鋭の研究者ですが、土地家屋調査士としては何年にもわたり立命館大学の寄付講座にいても大変お世話になっている先生です。
講演ではまず、「所有者不明土地問題」とは何か?ということで所有者不明土地問題が昨今大きくクローズアップされてきた経緯と、それに連動した法制度の整備について整理をいただきました。さらに今年に入って整備された表題部登記適正化法と先生のご専門の入会権の詳細についてお話をいただきました。
講演のまとめとして、これまで一貫して土地に関しての登記といえば「分筆登記」が件数も多く、代表的な手続きでしたが今後は「合筆登記」と、それに伴う国土の再統合が重要になるであろうとのことでした。私たち土地家屋調査士も報酬額の多寡?もあり、ついつい分筆登記に目が行きがちですが、パラダイムの転換が求められるこの時代においては、幾つかある合筆登記の制限項目を緩和し、まずは明治以降の様々な政策の影響で細分化された土地を「とにかく広げる」「所有者単位で集約する」ということは社会政策として、一考に値するご提言であると思いました。
また第2部においては「表題部所有者不明土地への法務局の取り組みと土地家屋調査士の今後の関わり方について」と題して大津地方法務局総括表示登記専門官の吉水 伸 登記官より主に今後の所有者等探索委員について表題部登記適正化法のより具体的な解説をいただきました。なお、所有者等探索委員については主に土地家屋調査士などの国家資格者が就任することが予定されていますが、解説では当該地域の歴史・文化
の研究者も対象とされるようで、なかなか斬新と言いますか、面白いとは感じました。
続いて「資格者代理人方式によるオンライン申請に関する実務について」と題して大津地方法務局総務登記官 水野 啓吾 登記官より、今年11月11日より開始が予定されている土地家屋調査士報告書方式について説明をいただきました。新しいオンライン申請の方式ということで会員さんの関心も高く、質疑応答では質問が活発に出ていたことが印象的でした。
今回の研修会は出席率の低下が囁かれる滋賀県土地家屋調査士会の研修会としては参加者もいつになく多く、内容も時宜にかなった所有者不明土地問題について総論から各論へとお話がスムーズに流れるものであり、お聞きしていて大変理解しやすいものであり、大変充実したものであったと思います。
土地家屋調査士制度が今後も長く社会に必要とされるためには、社会経済の動向に常に注意を払い、人口減少というこれまで直面したことのない、先の見えない今の時代にフィットした不動産管理の在り方を関係機関や研究者の方々とも共同し、模索していかねばならないと感じました。
大変お忙しい中、講師をお務めいただきました三名の先生方、誠にありがとうございました。