前回に引き続き土地にまつわる滋賀県の方言を取り上げます。今回は「ネング」なのですが、漢字では当然「年貢」となります。滋賀県方言語彙・用例辞典では全県的に使用されていると記されていましたが、全国ではどうなのでしょうか?
もともとは近世以前では領主におさめる税金を年貢、といっていましたが、それを転じて小作料のことを年貢と言い出したものと思います。現在でも田んぼの小作料のことを年配者の方は間違いなく「ネング」と言われます。
話はそれますが、私の家もわずかばかりの田んぼを所有していますが、年貢はほとんどもらっておらず、固定資産税分も賄えていないのが現状です。最近は引き受け手の減少あって「年貢無し」というケースも増えてきたようです。しかし田んぼを所有していることが差し引きマイナスのでは、新規に田んぼを取得するといった意欲はなくなりますね。
田んぼの小作料について「ネング」というのでしたらまだ理解の範疇かもしれませんが、宅地やお部屋の賃借料もやっぱり「ネング」と言われる年配者の方は多いです。そもそも賃貸借契約書に賃料が「玄米何俵」というふうに明記されているものもあります。もちろん江戸時代ではないので米俵で払うわけではなくて、米価を円に換算したものを支払うという契約です。土地家屋調査士や宅地建物取引士になる前のことでしたが、こんな米本位制のような契約もあるのだな、と当時感心した記憶があります。ある意味、米価の値段の上下によって賃料が変動してていくわけですので、いちいち契約をし直す手間が省けることを思うと合理的な面もあるように思いました。
そうしたことで、滋賀県で「ネングいくらにする?」と言われてもお上に献上する訳ではなくて、土地の賃料のことですので驚かないで下さい。