先日、図書館で懐かしい一冊に出会いました。私が新入社員のころ、当時アサヒビールの会長であった樋口廣太郎氏によって書かれた「前例がない。だからやる!―企業活性にかけた私の体当り経営 」です。
正直なところ、当時そんなに関心があったわけではないのですが、同じ住友系列の企業に勤務していたこともあり、周囲からは樋口廣太郎氏は企業経営の神様のような扱いを受けておられたことを思い出します。そういえば同氏が地元の彦根高商(滋賀大経済学部の前身)出身という縁もありました。また、日本社会の動向としては兵庫銀行の破綻に端を発し、その後の経済不況や金融危機の不穏な足音が近づいていたことも思い出されます。
そこでこの、「前例がない。だからやる!―企業活性にかけた私の体当り経営」は1996年の発刊ですので、まさにそうした中で世に出されたわけですが、内容云々以前にそのタイトルが気になってはいました。「前例重視」、やる気のある若手社員にとってはどうしても煙たいルールであることは間違いないと思います。そんな若手の不満をうまく生かしたこのタイトルは今も思い出すほど印象的なものでした。
正直なところ、内容としては「原材料費を上げてでもいいものを作る」「古いビールは躊躇なく破棄し、徹底した鮮度管理をする」「味・顧客重視」などという当然と言えば当然のようなことが書かれており、これといった斬新さは感じられません。ただ当時の風潮からいえば前例無視の経営だったのでしょうね。
当時は専売公社や電電公社、それに国鉄も存在していたわけで、4社の寡占状態であったビール業界も「準官公庁」的な経営の色が濃かったのかもしれません。戦前からの伝統ある名門企業でもあり、社員の目は外よりも、内に向いていたのでしょうね。そう考えると、こうしたビジネス書も歴史書・古典などのように時代背景を踏まえて、読む必要が出てきたんですね。
ただ時代は変われど、事業経営の王道は不変な点も数多くあると思います。規模は違えど、事務所経営について今回改めて考えさせられました。
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