昨日は野洲市にて開催されました滋賀県土地家屋調査士会主催の「地籍セミナー」に参加してきました。おりからのコロナ禍もあり、今年度滋賀会ではあらゆる催し物や研修会は開かれていなかったのですが、長年にわたり続けられてきた地籍シンポジウムのことでもあり、少し小規模に改編して何とか開催にこぎつけられました。なお、今回のセミナーのテーマは「空き家・所有者不明問題について」ということで土地家屋調査士としても非常に関わり合いの深いものです。
セミナーではまず第1部として大阪経済法科大学米山秀隆教授(住宅・土地アナリスト)より「空き家問題の現状とコロナ後の不動産市場」と題した講演をしていただきました。
米山教授からは空き家対策について、様々な具体性のある提案をしていただきました。新築の際から取壊しを視野に入れた供託的な制度の導入、税制、建築方式、空き家バンクの現状など、まさにアフターコロナの不動産のあり方を展望した内容でしたが、一つ一つが傾聴に値するものであったと思います。
とくに、昨今専門家のの間では話題になることも多い「所有権放棄」については「放棄料」を支払ってもらうことで放棄を可能とするルール化のお話は考えさせられました。実際、すでに田舎では不動産登記などの手続き費用をすべて売主持ちで、ゼロ円で売買する、なんて事例も発生していますし、ある意味同じことかと思うと理解できるご提案です。
ただ、個人的には自治会役員を務めた経験からも、管理責任が発生する自治体や国に所有権を移転するのではなくて、一次的には地元の自治会(地縁団体)に移転する方がいいのでは…とは思います。地方自治法で地縁団体が不動産を取得できるようになって久しいですが、私のまわりでも自治会が自治会館以外の不動産を取得し、駐車場などに転用しているケースはよく見られます。
そもそも墓地の所有者が「村中」になっているケースはよくありますが、これは何も墓地の専売特許ではなくて、江戸時代においては集落内のつぶれた一家の農地や宅地をとりあえず村持ちに変更し、村落構成員で管理していくパターンはいくらでもありました。そうしたことから歴史に学べ、ではありませんが固定資産税もかからない、空き家バンクほど敷居も高くない、まさに地元に密着した自治会をもっと活用すべきであると思います。なお、自治会が農地を取得するケースも増えてきましたが、この際は農地法の適用対象外にしていただけるとなお都合がいいとは思います。
少し横道にそれましたが、第2部では「 所有者不明土地 」についての実態調査報告として、実際に所有者不明土地がどのくらいあるのか、本当に九州と同じだけの面積が「迷子」なのか、検証を踏まえた報告をしていただきました。
さらに、第3部 パネルディスカッション「捨てられる土地と家 」 現場の実態と課題と題して米山 秀隆 氏 (大阪経済法科大学経営学部教授)、布施 篤志 氏 (野洲市 都市建設部次長)、沢弘幸 氏(滋賀県土地家屋調査士会会長 東近江市空家等対策 推進協議会委員)による討論がありました。野洲市の布施様からは実際に行政代執行で区分建物を取り壊した事例につき報告をいただきましたが、実際の手続きの流れをもとにポイントを踏まえた内容で大変よく理解できました。
コロナ禍のもと、開催もいかがかと思わないではなかった今回のセミナーでしたが、会場からの質問も多く出るなど、この問題に対する参加者の熱が感じられるものだったと思います。ご準備いただいた関係者の皆さん、大変お疲れさまでした。