「老後の資金がありません」垣谷美雨著(中公文庫)を読む

 

 皆さん、老後の資金、貯まっていますか?

 

 先日、法務省のサイトを会議で紹介され、映画「老後の資金がありません!」(配給・東映)とのタイアップポスターを見た流れで、文庫本を読ませていただきました。ポスターもお堅いイメージの法務省にしては結構はっちゃけた感じのタイアップのようで好感が持てましたが、小説の方もとても読みやすかったです。また週末には主演の天海祐希さんや草笛光子さんが出演された番組(要は映画の宣伝)を視聴させていただきました。草笛さんも随分息の長い役者さんだと思ったら、なんと88歳とのことで、とにかくその元気さに驚きました。皆が皆、あんなふうには生きられたら「老後」は存在しませんね。

 天海さんは結婚歴もなく、お子さんもおられないようですが、こういった「カッコいい女性」であっても老後の問題はやっぱり切実なようで、番組でも人生の後悔があるようなニュアンスの発言がありました。天海さんにいわれたら、世の中の大多数は救いようがないように思いますが、今回の映画の性格上、強い、カッコいい女性のイメージは相応しくないことからの発言かもしれません。

 

 小説の粗筋はネタバレということでふれませんが、一つ気になったのは天海さん扮する主婦の夫の退職金のことです。50代半ばということで退職金の計算がなんどか出てきますが、大卒で、そこそこの規模の会社に長く勤務しているはずの夫の定年退職金の見込みがたしか1200万円とありました。その退職金(見込み額)も不景気で段々と目減りしていき、最後はゼロになってしまうわけですが、ちょっと低い設定すぎるようには思いました。

 

 思い起こせば私が就職したころ、退職金は大凡2000万円くらいはもらえるものと考えていました。それでもあまりに先のことで真剣に計算したこともありませんが、その後我が国の退職金の相場は落に落ちて1000万円台前半程度のようです。ですので小説の設定は不自然ではないとも言えますが、毎月の給与の減額は労働者の反発を食らうので、姑息にも退職金を減らして総人件費を絞るという日本の労働市場のトレンドはいかがなものかと思います。

 

 そもそも日本の退職金制度は給料の後払い、労働人口の流動化を低下させるもの、といった批判もありましたし、私自身もそれ程肯定的ではありません。ただそこを削るなら、当然毎月の給料にその分の上乗せがあってしかるべきです。毎月の給与にそれほど差はなくても、生涯年収ではがっつり減ったということですね。相対的にこの頃の日本人が貧しくなった、と言われますが、退職金をケチって、国民総出で老後の資金作りにいそしんでているようでは、経済の好循環は夢のまた夢だと思います。

 

 退職金と縁がいない、自営業になって20年近くたちますが、自分がかつてもらった30万円の退職金(6年弱の勤務で)について、しみじみと思いを巡らした一日でした。

 

 

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