小牧地区土地宝典(地番地積地目入図)を入手しました【完】

 

 この間、二回に分けて個人的に入手した小牧地区土地宝典(地番地積地目入図)について解説をさせていただきました。

 

  小牧地区土地宝典(地番地積地目入図)を入手しました

  小牧地区土地宝典(地番地積地目入図)を入手しました【続】

 

 今回はその最終回となりますが、土地宝典の内容というよりは土地宝典についての訴訟(土地宝典事件)についてあれこれ感想を述べたいと思います。

 とはいえ、少々土地宝典についての説明も少々させていただきたいのですが、今回の土地宝典には付録的に「平方メートル畝歩換算早見表」がはさんでありました。メート法自体は明治から使用されてきましたが、完全に適用されたのは昭和34年とされています。しかし、実は不動産登記の分野では遅れて昭和41年4月以降に、ようやくメートル法が使用されることになりました。おそらく膨大な量の尺貫法で記載された地積や床面積の修正が面倒だったからだと思うのですが(勝手な推測です)、思えばそれほど尺貫法がわが国において深く根付いていたわけですね。

 今回の換算表、内容的には別に珍しくともなんともないのですが、こうした早見表の存在はまさに時代を感じさせますね。

 

 本題の「土地宝典事件」に入っていきます。 ここでは「知的財産法政策学研究 第31号」に掲載された時井真氏による判例研究をもとに見ていきたいと思います。事案としては法務局にて利用者に対し便宜的に貸し出しをしていた土地宝典の著作権を譲り受けたものから、複写権の侵害ないし複写ほう助、使用料の不当利得等について争われたというものです。

 裁判結果としては原審で原告勝訴、被告(国)から控訴、最終的には原告の勝訴(一部)という流れだったようですが論点を拝見していきますと、それぞれ興味深いところです。

 

 そもそもですが法務局の閲覧コーナーに土地宝典が備えてあった、というのも私の経験からは全く想像がつきません。が、恐らく都市部の法務局では来訪者も多かったでしょうから、混雑を避ける意味でも、そういったことがあったんでしょうね。

 そのあくまで便宜的に貸し出した、土地宝典を巡って国に対して訴訟を起こす、というのもなかなか想像の斜め上をいくような感想を持ちますが、ただ論文で整理された論点をみていきますと確かに理屈的には原告が有利なような気はします。

 そういえばこの判決が出た時期に、法務局のコピー機の使用について、住宅地図等について著作権の侵害にならない様に厳しくルール化されたような記憶があるのですが、背景事情はこんなことだったのか、と今更ながら思い出されました。

 

 土地宝典事件は、はからずも時期的にも、土地宝典の社会的な存在としての、まさにピリオドを打つ事件になったような気がします。土地の価値は平成期以降、特に地方では暴落した感がありますが、「土地宝典」ならぬ、土地は宝、との認識が再び広く社会に醸成される時代がくればいいのですが…。

 

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