「増補改訂日本長大地名事典」を読む

 

 

 「増補改訂日本長大地名事典」の発行をネットで知りました。早速、PDF版のみを購入し拝読させていただきました。

 地名、なかでも古い地名と言えば令制国や郡名が代表的かと思うのですが、それらは基本的に漢字二文字に統一されています。それなりに知られていることかと思うのですが「諸国の郡名、里名を、好い字の二文字に改めて定着させよ」という当時の勅令にならって(当然大陸の地方制度を念頭に)、いわば権力をかざして、(当時は)強制的に定着させた地名と言えるかと思います。

 

 今回、本書で取り上げられた地名は基本的に「小字」の名称です。小字といっても馴染みの薄い方もおいでだと思うのですが、土地家屋調査士のような不動産登記に関わるお仕事であれば、不動産登記情報に必ずといっていいくらい記載されておりますので、日常的に接することになります。

 私も土地家屋調査士の仕事をする中で随分とさまざまな(ある意味自由な)名前の小字があることに気づくことが多いのですが、何分滋賀県は条里制の地割が今なお色濃く残る地域ですので、小字単位では圧倒的に条里由来の名称(六反田とか、五ノ坪とか)を見かける機会が多いです。

 

 そういえば立命館大学の寄附講座で講義を担当させていただいた際に「小字」について説明をさせていただいたところ、学生さんのリポートに「祖父の家で、田んぼのことを地番や番号ではなくて、何やら名前めいたもので読んでいたことを思い出した」ということを書いていただきました。まさに私自身も同じような経験をしており、中でも田んぼは地番ではなくて、小字名で呼ぶのが一般的だと思っていたくらいです。つまり小字とは農業や、山仕事などの日々の生業に裏打ちされた、民衆によって生み出された地名ということかと思います。

 

 少々個人的な体験を述べていましたが、本書においては本当に多くの長大地名が紹介されており、びっくりさせられます。その界隈では有名な「愛知県海部郡飛島村大字飛島新田字竹之郷ヨタレ南」で25字とのことですが、それ以上の文字数の地名って探せばあるもんですね。60字以上の地名に至っては地名の本来の役割を果たしていないのでは、と心配にすらなります。

 ただそれらの名称の多くが、その土地を説明するに際してどうしても必要不可欠な要素、地番を必要としなかった時代の名残だと思います。また、長大化の原因として字同士の合体に伴う「合成地名」もあるように思いますが、そのあたりを筆者にはもう少し整理していただけるとよりよかったように感じました。

 

 なお、P16の「小字名が長すぎて改製不適合?」の指摘については不動産登記のデータ化、オンライン化を考える上で、専門家の立場としても興味深いものでした。

 ネット以外ではなかなか入手しづらいかもしれませんが、特に不動産に関わる業種の方は一度本書を手に取られてはいかがかと思います。

 

 

 

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