先週土曜日は地籍問題研究会第37回定例研究会が開催されましたので、オンラインで参加させていただきました。
テーマは「変則型登記と所有者不明土地問題」、個人的にはこの二年ほど法務省の所有者等探索委員にも任命いただいていたこともあり、お仕事の面でもまさに直結する内容でした。
いくつかのご報告があったわけですが、なかでも関心があったのは特別講演「表題部所有者不明土地適正化法のインパクト―入会権を中心に」と題された立命館大学政策科学部の高村学人教授のお話です。まえにも本ブログで取り上げさせていただいたのですが昨年、岩波書店より「入会林野と所有者不明土地問題: 両者の峻別と現代の入会権論」を上梓されておられますので、今回はその内容のポイントとなる個所を取り上げてお話しいただいた形となります。
本は当然以前にも拝読していたわけですが、改めてお話をおうかがいしますと、いわゆる「わかりみが深い!」(すでに死語かもしれませんが…)と思いました。
まずふれられた所有者不明土地の分類なのですが、実際よりも少し?あおり気味の「九州より広い所有者不明土地が…」というインパクト重視の地点から、これからはもう少し詳細を詰めていく作業が必要なフェーズに入っていると思いますので、こうした整理は地に足のついた問題解決を進める上で重要な前提になると思います。
また、従来の入会権の法学説の立場として変則型登記は、入会地であることの推定根拠とされているようですが、表題部所有者不明土地適正化法の立場としては、立法事実・登記のみのサンプル調査 がメインで
入会権への言及もないことから、多くが調査打ち切り等の結果になっていることのご指摘も、実際に調査した経験からも、うなづけるものでした。
他にも「林業現場におけるコンプライアンス型法化社会の進展」として、不動産登記をより重視するように社会が進化してきていること(裏返せば、土地家屋調査の業域拡大も?)、「字名義地とポツダム政令」として部落と部落会について言及いただきました(正直なところ恥ずかしながら私もいままで混同していました)。さらに「財産区と字名義地の区別」についても改めて考える良い機会となりました。
最後にまとめとして「入会権・入会地の登記をどうすべきか ー『入会林野と所有者不明土地問題』の主張」として整理していただきましたが、立法論について是非今後も深めていただければと思いました。土地家屋調査士の立場としては入会権について「境界論」からもっとアプローチできることもあると思うのですが、今後に期待しましょう。
他のご報告も併せて知的好奇心をくすぐられる、大変刺激的な研究会でしたし、特に所有者等探索委員を今後担われる方は今回のお話を是非一度お聞きいただけると調査を行う上でもきっとプラスになるのではと強く感じました。