本書は歴史地理学の泰斗である金田章裕京大名誉教授による土地の区画について、なぜ各地で四角形のパターンが多く見られるかについて正面から取り上げた一冊です。同じ日経プレミアシリーズで先行して出版されている「地形と日本人」「地形で読む日本」も素晴らしかったのですが、本書は人為的な土地の区画のお話ですから、土地家屋調査士はもちろん、不動産に関するお仕事をされている方にとってはより親しみやすい内容だったのではないでしょうか。
個人的に特に印象的だったのは「中世ヨーロッパの長大な紐状の耕地」として取り上げられたドイツの細長い土地区画の事例です。日本でも、いわゆる「ウナギの寝床」や、山林地などで似た事例はありますが、まさに細長さの極み、「紐」状の区画の存在に驚きました。そうした区画の発生理由として、(私見ですが)共有地の悲劇の土地区画版ということは共通しているとは思うのですが、洋の東西を問わない人と土地との関係性、そしてそれを反映した土地区画の意味について思いを巡らさずにはいられません。